「繁花」ドラマ解説 第26話 (ネタバレ有り!)

繁花 ドラマ
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このシリーズでは2024年に中国で大ヒットしたドラマ「繁花」のあらすじを紹介して参ります。今回は第26話の解説です!

26話では汪小姐が自分の夢の実現に向け奔走する…!それに対し阿宝は…?

そして洋泾浜英语とは

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第26話あらすじ解説

今日はクリスマス・イブである。汪小姐が事務所に戻ると魏总がクリスマスの飾り付けをしている、ホリデーシーズンを祝おうというのだ。汪小姐は翌日すぐに深圳に行かなくてはならないのでお祝いをする時間など無いと言う。魏总は年末のこの時期、香港人が皆深圳経由で帰省するから航空券や鉄道の切符はなかなか手に入らないが、俺が何とかしてみる、と請け負う。去り際、汪小姐は魏总が一人健気に飾り付けをしているのを見て、イブを一緒に祝う事にする。二人はバルコニーで乾杯し、汪小姐は5年前に阿宝と和平饭店のテラスで同じようにイブを祝った事を思い出し複雑な気持ちになる。二人は金も成功も無い今の境遇を振り返る。魏总は倉庫でがんばる汪小姐を見た時、外贸公司の科长にはなれなくても、社長になれる器だと見込んだ、と言う。汪小姐は、魏总を今の会社のマネージャーにしたが、その実、小开(社長の息子)から瘪三※(ビェッセー:チンピラ、乞食)にしてしまったと返す。魏总は二人しかいない明珠公司、たとえ失敗しても二人の体験は二人だけの資産だ、そして俺は絶対に会社を成功させてみせる!と宣言する。そして二人できっと成功してみせるとイブの夜に誓うのであった、「经常庆功,就能成功!」と。三枚目キャラの魏总だが、だんだんと汪小姐との信頼関係が深まっていく様子が素敵である。

瘪三 (biekse ビェッセー)とは
これは上海語で乞食とかチンピラを意味する言葉だが、「洋泾浜英语(yangjingbang English)」だと考えられている。洋泾浜英语とは、貿易のために上海に来ていた欧米人が話す英語とローカルの上海語がまざったピジン語(異なる言語の話者が接触して、交流の必要から生まれた、母語とは別の、応急実用のための言語)だ。洋泾浜は昔上海市内を流れていた運河で、この河沿いで欧米人と上海人のビジネスを通じた積極的な交流が行われていたようだ。瘪三はbegger say, beg sir,といった英語が転じて生じた上海語だと言われている。代表的な洋泾浜英语としては、他に差头(cadhou ツァードゥ:charterが転じてタクシーを指す)、肮三(angse アンセー:on sale が転じて卑屈な人間を指す)、老虎窗(laohucang ローフツァン:roofが転じて屋根についた出窓を指す)などがある

阿宝が事務所に帰ると、年末のギフトがたくさん届いており、阿宝はそれを爷叔にお裾分けしつつ年末年始は帰省するように勧める。この時、汪小姐は上海近郊ではウォルマートの案件を受けてくれる工場を見つけられない事、のサポートで深圳へ工場探しに行こうとしていること、そして爷叔が邮票李に指示して深圳行きの航空券を買い占めた事を知る。これで汪小姐は手詰まりである…。夜、阿宝は邮票李に電話し、汪小姐のために深圳行きの航空券を2枚探すように指示する。汪小姐は阿宝にとって商売敵なのだが、阿宝はまだ汪小姐をサポートしたいと思っているのだ(汪小姐はそんな事望んでいないし、このふわふわした阿宝のスタンスには視聴者も賛否両論だろう)。魏总は航空券が全て売り切れている事を知ると、黄牛(huáng níu:ダフ屋)からチケットを入手しようとする。そこにあるダフ屋がチケットがあると言い魏总に近付くが、事もあろうか詐欺だと早とちりした魏总はそのダフ屋を殴ってしまい、二人して派出所に勾留されてしまう。実はこのダフ屋、邮票李が手配した人物で、本当に航空機持っていたのだ…。

汪小姐は航空券が無いと知るとタクシーで深圳まで行こうとするが、運転手にそんな遠いところ無理だと断られる。キャデラックくらいしっかりしたクルマじゃないと、と言われ汪小姐は至真园に預けてあるキャデラックを思い出す、そう自分で運転して深圳まで行こうというのだ。思い立ったが吉日、汪小姐は至真园へ行き潘经理からキャデラックを借り、深圳へ向けて片道2日間の旅程を出発する。潘经理は阿宝にこの事を報告、阿宝は魏总へ汪小姐が単身クルマで深圳へ向かった事を伝えると魏总もバイクで後を追う。

魏总はその後、結局交通事故に遭いリタイア、阿宝は邮票李通じて汪小姐の動向を追う。汪小姐がいったん江浙沪エリアの出てしまえば爷叔の支配から逃れられるが、爷叔は元旦までに汪小姐が深圳に着くことは無いだろうと言い、家で一緒に飯を食べようと阿宝を誘う。阿宝はその日は先約があると言い、翌日事務所で夕食を取ることを約束する。

汪小姐は途中で道に迷いながらも、二日二晩運転しながら何とか深圳までたどり着くが、たどり着いた先で一息ついているところを引ったくりに襲われてしまう。大事な商売道具が入ったカバンを奪われないよう抵抗するが、犯人にレンガで返り討ちに遭ってしまう…果たして汪小姐は無事なのか!?

阿宝は邮票李からの電話で汪小姐が襲われたこと、そして范总が派出所に迎えに行ったことを知る。ちょうど同じタイミングで爷叔には夫人から電話が掛かってきて、帰宅を催促され家に帰っていく。阿宝は爷叔が一連の出来事を仕組んだのではといぶかしみ、ホテルに爷叔の電話の通話記録を請求する。

汪小姐と范总は(范总があてにしていた)アパレル工場・七彩服装厂へ派出所から直行する。ところが吕总はちょうど上海からの他のオーダーを受けたところで、汪小姐のオーダーは受けられない、と拒否する。范总が全力で抗議すると、吕总は丸二日も汪小姐を持ったし、養わないとならない工員もたくさんおり、仕方のない選択だと反論する。汪小姐は、これは自分にとって初の案件であり、もしオーダーを受けてくれたら今後長期にわたっての合作を約束する、と熱弁を振るう。汪小姐の熱意を受け、吕总は元の価格の1.5倍という条件付きでオーダーを受けると言う。とてもその場では決められず、汪小姐と范总はいったんその場を後にする。

吕总のところに別の上海からのオーダーが入ったのは、実は偶然では無かった。阿宝が調べた爷叔の通話記録から、これは爷叔が外贸公司の梅萍に指示して入れたオーダーだった事が分かる、爷叔は徹底的に汪小姐がウォルマート案件を獲れないよう妨害していたのだ。何か意を決する表情の阿宝…

行き詰まった汪小姐と范总だが、范总は諦めずに次の手を探すべきだと言い、友人達を頼ってはと提案する。汪小姐は阿宝は絶対に頼らない、と言うが范总は李李を当たる事を提案する。李李は深圳にいた事もあり、彼女の人脈には期待ができる、と。范总は早速李李に電話をかけるが果たして…

次のシーンでは爷叔が誰かから報告を受けている。5本もの生産ラインをこのタイミングで提供するなんて李李が十人いたって不可能だ!と爷叔は混乱している。そう、范总は李李の紹介で新たな工場の候補を探し当てたのだ。

汪小姐と范总はその工場「天马服装厂」にて马总と会う。马总は空いている5本の生産ラインを特別価格で汪小姐に提供できると言う。契約書の条件も問題なく、正に渡りに船である。ただ話がうまく行き過ぎており、汪小姐はいぶかしむ。马总との会話の中で、马总は香港で生まれ育って、李李とは幼馴染だという。これを聞いた汪小姐は席を外し、马总は李李ではなく他の人からの紹介では無いのか、范总に詰め寄る。李李が香港で生まれ育ったハズがないのだ。范总は阿宝が紹介してくれた事をしぶしぶ認めるが、デッドラインが翌日に迫っており、恥も外聞も捨て马总と契約することを強く勧めるのであった。

汪小姐は一人思案にくれ、電卓で何やら計算を重ねる。そしてやっと思いを決し、马总に会いに行く。范总もこれで汪小姐が救われると大喜びだ。フェイ・ウォンの执迷不悔をBGMに二人は马总のもとへ到着。そして汪小姐が発した言葉は「帮我谢谢宝总,但这份合约我签不了」、そう阿宝に感謝しつつも契約は断るのだ。范总はその判断が全く理解できず汪小姐を問いただすが、汪小姐は笑顔で一言「为了一口气(思い切っただけ、メンツのため、といった意味合い)」と答えるのであった。そして七彩服装厂へ向かう。范总は汪小姐を説得するよう阿宝に電話をかけるが、阿宝は自分にできる事は全てやった、自分に代わって汪小姐の案件落札を祝うよう答えるのであった。

汪小姐はその足で七彩服装厂へ行き、吕总とウォルマート案件の契約を結ぶ。お互いビジネスの成功に向けた新たな合作を喜ぶのであった。しかし元の価格の1.5倍で契約した汪小姐、大赤字なのでは…?

爷叔は汪小姐が工場と契約できた事に憤慨、そして実は阿宝が陰ながら汪小姐をサポートしていた事を突き止める。

その日、大晦日の夜、阿宝が和平饭店に戻ると爷叔が阿宝を待ち構えている。阿宝がまだいたの、と声を掛けると爷叔は

「我尽心尽力为你盘算黄浦江的事情,你心里装的却是苏州河的勾当!」
(私はお前のために必死で黄浦江の事をやってあげたのに、お前は心の中では苏州河のつもりでやりやがって)
と激怒しオフィスを去るのであった。阿宝は1993年がこんな惨めに暮れ行くとは想像出来ていなかった…。

さて爷叔のこのセリフはどういった意味なのだろうか。ここではまず苏州河に注目してみよう。苏州河は苏州近くの太湖に発する全長125kmの河で、外灘の外白渡桥を通じて黄浦江に流れ込む支流だ。苏州河は虹口区,黄浦区,静安区といった上海の中心(のちょっと北側)を流れ、長らく上海の水運を担い、この河沿いに文化も発展してきた。歴史ある河である一方、猥雑な義理人情の象徴といったところだろう。一方の黄河路はこのドラマではビジネスの中心地、華々しい表舞台として描かれる。爷叔はこの二つの場所を引き合いに出し、阿宝がビジネス(黄河路的事情)に私情(苏州河)を持ち込みやがって、と怒ったのであろう。阿宝は結局、排骨は排骨、年糕は年糕と割り切れないのだ。
私が参考にした記事:https://m.sohu.com/a/757492643_121286085/
繁花ではこのように、パッと聞いただけでは意味を測りかねるセリフに溢れており、中国の視聴者たちもあれこれ考察している(セリフの意味が分からなくてもご安心を笑)。これもこのドラマの魅力である。

第27話へ続く!

本記事はhttps://tvmao.com/drama/YG0jXGVl を参考にしています

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